三百吉三さんびゃくきちざ えんたん
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26分くらい
ゆっくり間をとると30分になる可能性あります

七菜:女性:なな。24歳。勝気だがまっすぐな性格。

吉三:男性:きちざ。和服にくわえ煙草の江戸っ子おじさん。
   外見年齢40代くらい。裏稼業が生業。

お嬢:不問:女装の盗賊。吉三の昔の仲間。

お七:女性:おしち。吉三の幼馴染みだった女性。一途。
    七菜と兼ねてもいいし別でも大丈夫です。

相手:不問:吉三ともめていた相手。お嬢と兼ね役。


四人でやる場合


三人でやる場合


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背景素材配布元 : Kigen 様

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※この台本の『現代』は1990年の設定です。

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七菜:――その日、あたしは友達につきあって
   ディスコに行っていた。
   穴場とかいうから来たのに
   ただの街はずれのボロい店だった。
   ボディコンとかあたしは似合わないし、
   ディスコ自体好きじゃないのに。
   ホタル族よろしく店の外に出て
   風に当たりながら煙草を吸ってると
   隣の工事中のビルからバタバタ足音がする。
   なんだろう……?

相手:ひいっ、やめ、たっ、助けて!

吉三:往生際(おうじょうぎわ)がわりいねえ

相手:い、いくらもらってる? 倍出す! 倍!

吉三:お前さんは仕事の場でそんなの持ちかけられて、
   受けるのかい?
   だとしたらいけねぇな。
   どんな仕事も信用第一ってやつだぜ

七菜:――ここからじゃはっきりは聞こえないけど、
   二人の人がもめてるようだった。
   悲鳴じみた声と、なんだか嫌な匂いがすることに気付く。
   ガソリンか、灯油か……
   ハッと、息を飲む音が漏れた。

吉三:――女の声がした。
   ぱっと顔を上げると若い女がこちらを見ている。
   まずい、見られた――
   と思うと同時に、俺は女の顔にくぎ付けになった。
   ――お七(しち)!?

七菜:――くわえ煙草に着物を着た古風なおじさんが、
   あたしの顔を見て驚いたようにぽかんと口を開ける。
   口からこぼれた煙草がぽろりと地面に落ちる。
   瞬時に青い火が音を立てて広がり、
   きんいろの炎へと変わる――
   あたしの足元まで!
   ちょっと、嘘でしょ!?

七菜:い、いやああああああっ!!

吉三:お七っ!!

七菜:――おじさんがこっちを振りむいて、駆け寄ってくる。
   舞い上がる着物の袖が
   まるで鳥みたいに見えた、その画(え)を最後に
   炎のフラッシュに吹き飛ばされるように
   あたしの意識は途切れた。


(長めに間)


七菜:――なんだか悲しい夢を見たような気がする。
   ゆっくり目を開けると、見たことのない、古めかしい天井。
   起き上がって見渡してみると、
   和室……というか、純和風の家だ。時代劇みたいな。
   かすかに足がじんじんと痛い。
   火傷したのかな。
   ガーゼが大きく二か所貼ってある。

七菜:……どこ、ここ……

吉三:お、気が付いたか

七菜:――例のおじさんがお盆を持って入ってくる。
   水と薬とおまんじゅうの乗ったお盆を
   あたしのいる布団の横に置いて座った。

吉三:嬢ちゃん運がいいよ。
   あの騒ぎでほんの軽い火傷で済んだ。
   ちゃんと治ったら痕も残らんだろう。
   いや、もちろん巻き込んで悪かったがね

七菜:い、いえ……ありがとうございます。
   手当してくれたんですか?

吉三:おう。悪いね、足に触っちまったよ。
   セクハラってやつかな?

七菜:とんでもないです、ありがとうございます。
   ていうか、なんだったんですか、あれ……

吉三:ああ、あれか。
   借りた金を返さない奴に、ちゃんと返すよう、
   お説教を頼まれてたのさ。
   そしたら逃げやがったから追っかけたのよ。
   まさか逃げ込んだ工事現場に
   油なんざこぼれてたとはなあ。

七菜:――笑ってさらりと答えるおじさんに、
   なにか、強い違和感を覚えた。
   なんだろう。なにかおかしい。

七菜:……あの、その首のガーゼ、どうしたんですか

吉三:これかい。ああ、火傷だよ。あんな有様だったからな

七菜:首にですか? 地面から燃えたのに?
   あたしの火傷は足なのに?

吉三:……そりゃ俺が一番ど真ん中にいたからな。

七菜:それにしては元気そうですね?

吉三:……ああ、運がよかったよ。

七菜:あの、

吉三:(さえぎり)薬の時間だよ、患者さん。
   あんまりいいもんがなくてすまねえが、食べて薬を飲みな。
   あと塗り薬も新しくするんだ

七菜:「倍出す」って言ってました。
   何のお金でいくらか知んないけど、
   お金返せない人が言えるセリフかな。

吉三:(小声)……聞かれてたか、どこまでドジだ……

七菜:……ごめんなさい。変なこと言いました。
   あたし、警察とか行きません。誰にも言いません。
   おじさん、不思議な人だけど、
   なんかマジで悪い人って気がしないから。
   助けてもらったし……
   あと、(くすっ)嘘、下手っぽいし。

吉三:(聞き覚えのある言葉にハッとする) !
   お前さん……

七菜:薬、ありがとうございます。
  歩けそうだし、これ飲んだら帰りますね。

吉三:吉三(きちざ)だ。

七:え?

吉三:俺の名前。嬢ちゃんは何て言う?

七菜:あ、えっと、七菜(なな)です

吉三:なな……。やれやれ、どこまで因果かね。

七菜:?

吉三:聞きてえか? どこまで聞きたい?
   あの日のことか? 俺のこと?

七菜:え、いいんですか

吉三:若え女の子から、
   それもてめえが巻き込んだ相手から
   情けかけられっぱなしじゃあ、男がすたるぜ。

七菜:……じゃあ、話してもいいと思うこと。

吉三:はは、じゃあ全部ってこったな

七菜:いいんですか!?

吉三:江戸っ子たるもの、ケチな男にゃなりたくねえからな。
   まあ、まずは薬が先だぜ。食って飲みな。


七菜:――「煙草吸っていいかい」と聞かれたので    どうぞと答えると、吉三さんは    隣の部屋から煙草盆(たばこぼん)をとってきた。    煙草盆の小さな引き出しからジッポを、    袖から刻み煙草とキセルを出し、火をつける。    キセルの吸い方を実際に見るのは初めてだ。    ジッポというのが不思議だけど、    みごとな鳳凰の彫刻が雰囲気を壊さない。    煙とともに、渋い香りがただよう。 吉三:さて、どっから話したもんかね……。    あの日のことにしようか 七菜:はい 吉三:俺ァ裏稼業の人間だ。あんときは、殺しを頼まれた。    油まいたのも俺だ。    借金があるかどうかは知らん。    依頼人は「騙されて色々まきあげられた」と言ってたが    真偽のほどは確かめてねえ 七菜:えっ!? 吉三:なんだい、察してたんじゃねえのかい 七菜:や……やっぱり改めて聞くと…… 吉三:まあ仕方あるめえな。    だが俺もそれで食ってるから、仕方ねえんだ。 七菜:仕方ないって、人の命を 吉三:なんとも思ってねえな。    思えねえんだよ、どうにも。    命ってもんが、よくわからねえんだ。もう長いこと 七菜:…… 吉三:(ため息のように煙を吐く)ながあい、こと……。    もう、百年も二百年も……    あるいはあの火より昔、もっと若え時分から…… 七菜:百? ってどういうことです? 吉三:(寂しそうにふっと笑う)七菜。俺、いくつに見える 七菜:えっと……四十代くらい 吉三:そうだな、まあそのくらいに見えるんだろうな 七菜:見えるってことは違うの? 吉三:俺ァな、死なねえ身なのさ。    歳も十年に一つほどとるかどうかだ 七菜:十年!? ……吉三さんは……本当は何歳なの? 七菜:――彼はふっと笑って、キセルをもう一度深く吸い込んだ。    私の言葉を見透かしていた笑みでもあり、    寂しさからくる笑みのようでもあった。 吉三:寛文(かんぶん)二年生まれだ。    四代将軍・家綱公のころだ 七菜:家綱!? ってことは 吉三:江戸時代さな。    言ったろう、俺ァ『江戸っ子』なんだよ。 七菜:そんな…… 吉三:クク。    なあお前さん、    ちょいと俺の首を絞めちゃくれねえか? 七菜:えっ! で、できるわけないでしょ! 吉三:ははっ冗談だよ。    とにかくそれくらい死なねえってことよ。    人間じゃねえのさ。昔は人間だったんだがね。 七菜:人間じゃない……?    だって、あたし霊感ないけど見えてますよ? 吉三:馬鹿、幽霊じゃねえよ。    いや、でも亡霊みたいなもんか……。    どっちにしろバケモンだろ実際、三百年も生きてたら 七菜:そんなこと…… 吉三:ないわきゃないだろ? 七菜:……昔は人間だったって、どういうこと……? 吉三:じゃあ、それを第二段落ってことにしようか。 (長めに間) 吉三:――俺ァ、貧乏御家人(ごけにん)の三男坊に生まれた。    サムライっつっても、    ちっと稼いでる商人よりも苦しいような家だったよ。    それも三男ともなりゃあ、特にすることもねえ。    家は兄上が継ぐからな。    ガキんころからドラ息子だった。    しまいに家ェおん出て悪い連中とつるんで、    盗みなんか始めてな。 お嬢:へへ、しめしめ。    夜道歩いてる女がこんなお宝持ってるとはねえ。    こんな金ぴかの、    それも立派な彫りのされたキセルなんて見たことないよ。    いくらになるかねェ……何十両、    ひょっとすると百近くするんじゃないか?    (機嫌よく歌うように)    月もおぼろに白魚(しらうお)の、    かがりもかすむ春の空、    思いがけなく手に入る百両。    こいつぁ春から縁起がいいわえ! 吉三:もし、そこの姐さん お嬢:(ちょっと女っぽく)あ、はい?    お侍様、なんぞご用でございますか? 吉三:きれいな顔してやるもんだ。あんたも盗人かい。    そのお宝、俺によこしな。 お嬢:(普通の声に戻る)チッ見てたのか。    へん、二本差してゆすりたかりとは落ちぶれたね。    どこの由緒正しきお馬の骨だい? 吉三:お坊吉三(おぼうきちざ)、なんて呼ばれちゃいるがね。 お嬢:ほう、あんたが噂のかい。同じ名だから覚えてたよ。    あたしも吉三ってんだ。    女のなりして仕事するから、人呼んで    お嬢吉三(おじょうきちざ)だ。 吉三:へえ、聞いたことあるぞ、お嬢吉三。    同じ名前のご縁に免じて……    花と線香、手向けてやらあ!    (刀に手をかける) お嬢:お、やる気かい兄さん?    やったろうじゃないか!(短刀を取り出す) 吉三:――まあ、こんなような、    くだらない渡世(とせい)をしてたわけだ。    このときはたまたま盗人の先輩の    和尚吉三(おしょうきちざ)が取りなしてくれた。    それから和尚を兄貴分に、    お嬢を弟分に、義兄弟を契(ちぎ)ってね。    三人であれこれやった。    いかに鮮やかに盗むかとか……    もちろん悪い道なんだが、楽しかったよ。    ……さて、こっからが不死身になったきっかけの事件だ。    和尚兄貴を待って、お嬢と一緒に、    寺の天女像の裏へ隠れてたときの話だ。 お嬢:(不安そうに)……兄さん、    なんだか煙たい気がしねえかい? 吉三:そりゃおめえ、さっきまでキセル吸ってたからじゃねえか お嬢:そういうんじゃないよ。    近くで火事でもあるんじゃないかってんだ。    ケホッ、(袖を口に当て)    嫌だ、なんだか熱いような気もしてきた…… 吉三:なんだって? ……うわっ、本当だ、燃えてやがる! お嬢:兄さん逃げよう! 和尚の兄貴にはあとで連絡っ、    (燃えた天井が落ちてくる)ひっ! 吉三:こっちだ!    焼けて壁がもろくなってる。    破るからおめえから逃げろ!    (刀の鞘で壁を壊す)あっちちち、くっ、でえっ! お嬢:ありがてえ! 兄さんも早く! 吉三:おう、今っ……ぐああああ!(焼けた柱が落ちてくる) お嬢:兄さあああん!!    ちくしょう、あんな重い柱、あたしの力じゃ…… 吉三:(息絶え絶え)う……お嬢、早く……行け……! お嬢:(半泣き)待っててくんな、すぐ助けを呼んでくる! 吉三:……ゲホッ……    ああ、死ぬ前に、弟分だけは助けられたな……。    閻魔様……ちったあ免じてくれっかな…… お七:ハァッ、ハァ、ケホッ……そこに、いるの……!? 吉三:――そんときだよ。    女が一人、炎ん中をこっちへ向かって来ると思いねえ。    赤い振袖を着て島田を結った、若え娘だ。 吉三:(苦しそうに)な、に……!? お前……、逃げろ……! お七:吉三さま!? ああ、吉三さまじゃありませんか! 吉三:!? おし……ち……? お七:そうです! お七、八百屋のお七ですよ!    ああなんてこと、こんな……! 吉三:――俺に駆け寄ってきた女、    こいつがお七ってんだ。    お七ってのは、小せえころから顔なじみでよ、    俺の家から近い通りにある八百屋の娘なんだ。    不思議なもんで、お七はこの火の中、    少し着物がススけただけで怪我もなんもしてねえんだよ。 吉三:馬鹿……お七……なんで……? 早く……! お七:吉三さま。この火をつけたのはあたしでございます。    あたしが帰ってもお縄になるばかり……それどころか……。    (決心したように)    いいえ、吉三さまをきっと死なせません!    神さま仏さま……吉三さまを、返してくださいまし! 吉三:――お七はそういうと、    たもとから短刀をとりだして、    突然自分の首をかき切った。    そうしてその首からあふれる血を、俺の口へ流し込むんだ。 お七:っぐ…… 吉三:おいっ!? おしち、んぐっ、ゲッホ! な、に お七:いいから……飲んで……!(飲ませる) 吉三:するってえとどうだい。    みるみるうちに怪我が治って、    痛くも熱くもなくなるじゃねえか。    落ちてきた柱も、不自然なほどあっという間に燃えて崩れて、    動けるようになった。    なにが起きてるやらと思ったね。 お七:よかった、治っていく……きち、ざ、さ……(倒れる) 吉三:(支える)お、お七!    ばっきゃろう!! お七! なんでこんな……!    俺なんざ逃がして生かしてなんになる!    盗人の悪党だぞ!    おめえは婿とって八百屋継ぐ身だろうが!    器量も愛想もよくて働きもんで……!    なんでおめえが死ぬんだよ!?    俺ァ誰にも言わねえし、    俺が火をつけたことにしたっていい!    死ぬな! 生きて帰るぞ!(お七を担ぐ) お七:(精一杯振り払う)だめ……!    血を飲んだだけじゃ、    ここにいたらやっぱり死んでしまうのかもしれない……    わからないのよ!    あなたは生きてください。    悪党だなんて、そんなこと言わないで……。    吉三さまは、いいお人です。 吉三:誰がいいお人でえ! こちとら大悪党お坊吉三だぜ?    御家(おいえ)に泥塗って、    博打(ばくち)に酒に盗みやって、    殺しだってやってんだぞ! お七:(消え入りそうな声)……あなたは、人殺しだけは、    まだしたことないはずです。    あたしをおなめでないよ。嘘が下手だね……。    嘘つきは泥棒の始まりと言うけど、    そう嘘が下手じゃ、悪党は務まりませんよ……。 吉三:嘘じゃねえ! 本当だ!    ちくしょう、ばっきゃろう……!(涙) お七:男の人が泣くもんじゃありませんってば。    (弱々しさを隠しスッと立ち上がる)    さて……醜い散り際は見せたくないから、行きますね。 吉三:待て、どこ行くお七!    行くな!    お七……お七――――!! 吉三:――泣く俺をたしなめて、    天女様みてえににっこり笑うんだ。    そしたらお七の体がパアッと光りだして、    首かき切ったとは思えねえ手際ですっくと立ちあがり、    すたすた歩いていって、炎の中に消えていった。 (長めに間) 七菜:――言葉が出せないあたしを尻目に    吉三さんは三度目の刻み煙草を吸い終わると、    キセルをトンと手のひらに打って、    煙草盆に灰をそっと落とした。 吉三:……血を飲まされた俺に、お七の記憶が流れ込んできたよ。    お七は、飛縁魔(ひのえんま)っつう妖怪だった。    今でいうヴァンパイアだ。    吸血衝動をお七は、火を見ることでおさめていたんだ。    衝動が強いほど大きな炎を求める……    そして放火するようになった。    人がいないと思って火ぃつけた寺に    まさかよりによって俺がいるなんざ、    思ってもみなかったみてえだよ。    おかげさまで、あれから三百十六年たってるが、    まぁだ死ねねえ。    ハハ、笑っちまうだろ。    ……っておい、何泣いてんだよ 七菜:(涙声)だって……悲しいよ……!    ……お七さん、吉三さんのこと、好きだったんでしょ 吉三:おっと……。女の勘ってやつかい? 怖え怖え。    でも大した話じゃねえんだよ。    俺が十七・八、お七が十三・四じゅうさんしくれえの、    ガキんころの話だ。    それから悪りィ世界に首つっこんでたから、    あの火事まで五年ほどかね、    ほとんど会ってなかったんだ。 七菜:それでも大事な思い出だったはずだよ!    じゃなかったらそこまでできないよ! 吉三:……馬鹿な女だよ。    ただのごくつぶしじゃねえ、悪党だぞ?    俺なんざ生かしたって何になる。 七菜:だったら、女なんてみんなバカだよ……。    あたしだって初恋の相手が    自分のせいで死にそうになったら    助けられる方法を何でも試したい 吉三:七菜。俺があんとき驚いたのは、    いや今でも驚いてるけどな、    お前さん、生まれ変わりみてえにお七にそっくりなんだ。    ……お七は火の女だ。    火事が起きたのが七菜のせいたぁ言わねえが、    何か感じるな。 七菜:ん……? ちょっと待って、吉三さん。    その首の傷、まさか!? 吉三:ハハハ、本当に勘のいい娘だ。 七菜:嘘でしょ、やめてよ! ねえ、違うよね?    あたしを助けるために    首切ったりとかしてないですよね? 吉三:同じことしたら俺も死ねるかなと思ったんだがな。    どういうわけか死ねねえみてえだ。    お前さんも、ちいと治りが早くなっただけで、    変な力が備わったり    不死身になったりはしてねえ。たぶんな。     七菜:やめてよもう!    死なないだけで、痛いのは痛いでしょ!?    やだよ、そんなして助かったって……! 吉三:いいや。別に人助けの自己犠牲ってんじゃねえよ。    俺ァそろそろ楽になりてえんだ。    誰も迎えに来てくれねえがな。ハハハ 七菜:――吉三さんは笑いながらまた刻み煙草を    ころころと丸めてキセルの火皿に詰める。    ジッポの金属音。きんいろの不死鳥。 (長めに間) 七菜:あ、もうこんな時間。    長居しちゃってすみませんでした。    そろそろ帰らないと。明日は仕事あるし。 吉三:こっちこそ引き留めちまって悪かったな。    バス停まで送るよ。 七菜:ありがとうございます。    ……そうだ吉三さん。    あの、ジッポってオリジナルですか? 吉三:ああ。    ジッポ本体は仕入れたやつだが、彫りは俺が入れた。    俺オモテでは一応彫金師(ちょうきんし)なんだ 七菜:今度あたしも作ってほしいです。お金貯めてくるから 吉三:フフ、いいぜ。金はいい、プレゼントしよう。    ついでにキセルも作ってやろうか。 七菜:ホント? 嬉しい!    でも使い方わかんないし、あれ外で吸えるんですか 吉三:教えてやるよ。ただ外じゃ難しいわな。    こっそり楽しむのも粋ってことにしてくれ。    どんな絵や柄がいいとかはあるか? 七菜:じゃあ、同じやつ。鳳凰……火の鳥で。 吉三:……ああ。いいよ。腕によりをかけて作ってやるぜ。                        fin_■ +----------------------------------------------------------+
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