【かぜかぜふくな】


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著作権は 鏡アキラ にあります
【利用規約】を必ずお読みください

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15分くらい

イチカ:女性:シンジの双子の姉。暗い弟を心配するあまり苛立つ。

シンジ:不問:イチカの双子の弟。常にぼーっとして無感情。

ミチル:女性:シンジとイチカの母。

ユウゴ:不問:二人の幼馴染の少年。明るく優しい。


※イチカ・シンジ・ユウゴの年齢は
 中学生〜高校生くらいのあいだで
 やりやすい年齢に設定していただいて結構です。
 また、シンジとユウゴは男性となっていますが、
 少年声の女性がやってもおもしろいと思いますので
 女性4人台本としてもお使いいただけます。




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ミチル:――神様、お願いです、神様。

イチカ:――もしいるのなら、私たちを、

ユウゴ:――いや、せめてあいつだけでも、救ってくれないか。


(間)


ユウゴ:イーチカ。
    聞いたぞ、今度英文スピーチコンクールだって?
    去年は優秀賞だったから
    今年は最優秀賞かねぇ

イチカ:気が進まないなぁ。
    もう、コンクール系出るのやめようかな……。

ユウゴ:かー。
    なにやっても賞状もらうやつは
    言うことが違うな

イチカ:そんなこと……。やめてよユウゴ。

ユウゴ:でも先生がほっとかないと思うぜ。
    おっと、次移動教室だわ。じゃあな

イチカ:うん、またね

シンジ:――高崎イチカは僕の姉。
    双子だが、全然似ていない。
    英語、国語、音楽が得意で、
    成績がいいのはもちろん、
    いろんなコンクールに出るたび
    賞状やトロフィーを獲得してる。
    先生からは生徒会への立候補を勧められてるそうだ。
    優秀で、明るくて、みんなから慕われてる。
    ……すごいなあって、素直に思う。


(短く間)


シンジ:ただいま……(小声)

ユウゴ:そんなんじゃ聞こえねえよ。
    ミっちゃんただいまー!
    お邪魔しまーす!

ミチル:あらユウくんいらっしゃい、シンジおかえり。
    イチカは?

シンジ:生徒会出馬するとかしないとかの話を
    先生としてるらしいよ

ミチル:そう。忙しい子ねえ。

ユウゴ:シンジと勉強してくー。いいよね?

ミチル:いいよ。今ある飲み物だと……サイダーでいいかな。
    あとで持っていきますよ

ユウゴ:ありがとー!


(短く間)


ミチル:――ユウくん……ユウゴくんは、
    隣の村部さんちの一人っ子。
    うちの子たちと同い年で、小さいころから一緒に育った、
    二人の幼なじみ。
    とくに、引っ込み思案なシンジをよく引っ張ってくれるの。
    二人のことだけじゃなく
    時には私のことまで気遣ってくれる、
    明るくて優しい、とってもいい子です。
    あの時も私たちを……そう、あの、時も……。


(間)


ユウゴ:……んで、その次の式を整理すると
    y−x=√5なわけだ、
    つまりy=x+√5、いい?

シンジ:えっと、いや、んーとさあ……

ミチル:はいはいお二人きゅうけーい。

ユウゴ:おー、ミっちゃんありがと。
    あ、やはた屋のリーフパイじゃん、俺これ好き!

ミチル:遠慮なくどうぞ。
    家庭教師の謝礼としては格安だものね

ユウゴ:いやぁ教えると俺の復習にもなっから。
    
ミチル:ありがたいわねえ。ね、シンジ?

シンジ:僕、そこまで言うほど頭悪い?

ミチル:ううん、頭悪いとか、そういうことではなくてね……。

ユウゴ:俺だって頭いいってわけじゃないし。
    平均くらいキープしてりゃ、別にいいよなあ。

ミチル:さてと、いつまでも邪魔しちゃ悪いし、
    ご飯の用意します。
    置いとくから適当に食べて飲んで、
    あと下げてきてね。
    ユウくんご飯食べていく?

ユウゴ:いや、七時になったら帰るよ。ありがと。

シンジ:うん……


(間)


ユウゴ:……なあ、シンジさあ

シンジ:なに。

ユウゴ:やりたいこととかないの?
    せっかく美術部入ったと思ったのに、全然行ってねーだろ

シンジ:ない。別に、どうでもいい。

ユウゴ:とりつく島もねーな

シンジ:だって。

ユウゴ:ミっちゃん心配してるぜ?

シンジ:……。

ユウゴ:はあ。

ユウゴ:――高崎シンジは俺の幼なじみだ。
    もう覚えてないくらい昔から友達。
    もともと大人しくて目立たないほうだったが、
    それでも小さいころはお絵かきが好きで、絵本が好きな、
    気のいいやつだったように思う。
    こんなに、なにに対しても興味を持たない、口数も少ない、
    ぼーっとした幽霊みたいなやつになってしまったのは
    やっぱりあの一件からだ。


(間)


イチカ:ただいまー。

ミチル:おかえりイチカ。ユウくん来てるよ。

イチカ:ユウゴ? またシンジと勉強?

ユウゴ:イチカ、おかえり。
    んじゃねミっちゃん、俺帰る。
    お菓子とかごちそうさまでした。

ミチル:ご飯食べていけばいいのに。

ユウゴ:いや、今日父さん帰ってくる日だから。

ミチル:ああそうだったの。よろしく言っといてね。

イチカ:ん、そう。気を付けて。
    つっても気を付けるほどの距離ないけど

ユウゴ:おお、ありがと。じゃあなイチカ、シンジ

シンジ:ん、じゃ。

イチカ:シンジ。お礼言いな。

シンジ:……

ユウゴ:いいよ別に、お礼言われるようなことしてねえもん。
    俺も勉強できたし

イチカ:(さえぎり)そういうのちゃんとしない人だいっきらい。

シンジ:……ごめん。ありがとユウゴ。

ユウゴ:(気まずそうに)いや……まあ……いいって。
    (空気を変えるように)うん、いや、俺もサンキュな!
    じゃねー!

ミチル:……ま、まあ、お礼はね、
    ちゃんと言ったほうがいいね?
    でもイチカもね、こう、
    ものの言い方には気を付けなさいね。

イチカ:(イライラ)は? 私なにか間違ったこと言った?

ミチル:内容は正しいよ、でも言い方ってものがあるでしょ

イチカ:意味わかんない。

ミチル:(悲しそうに)イチカ!

シンジ:ごめん。僕が悪いんだ。

イチカ:悪いと思うなら最初からちゃんとしな

シンジ:……うん。ごめん。

イチカ:謝ってって私一言でも言った?

ミチル:二人ともやめて!
    イチカは着替えてきなさい。
    シンジはお盆下げてきて

シンジ:……はい

イチカ:はい。


(間)


ミチル:――イチカとシンジが小学5年になった春、
    年の離れた妹が生まれた。
    名前はミツキ。
    よく泣きよく笑うかわいい赤ちゃん。
    歩けるようになったくらいのころ、
    事故で亡くなってしまった。
    シンジが吹いたシャボン玉を追いかけて
    車道に飛び出して……
    シンジの心には致命的な傷が残ってしまい、
    それ以来、ずっと無感情で、
    なにに対しても熱くなれない子になってしまった。

イチカ:――一番つらいのはお母さんに決まってるんだよ。 
    子供を失った悲しみと、誰も責められない悲しみと。

ミチル:――イチカ。……お母さんのことは、いいんだよ。

イチカ:――よくない!
    そのお母さんが無理にでも乗り越えたのに、
    いつまでも引きずっているシンジにはイライラする。
    もう何年たつと思ってるの。
    お父さんもお母さんも友達も
    みんなシンジを心配してるのに、
    シンジには、届かない……。


(間)


ユウゴ:シーンジー? かーえーろ……
    あれ?

イチカ:シンジなら美術部行くって言ってたよ

ユウゴ:シンジが!? 珍しいな。
    なんかやりたいことできたんかな

イチカ:そうなのかな……(嬉しそう)だとしたらいいね。

ユウゴ:イチカ……。うん。そうだといいよな!

ミチル:イチカ、おかえり。ん? シンジは?
    昨日も遅かったけど……

イチカ:なんか、美術部に行くって。
    美術コンクールも近いみたいだから
    なにか出すのかもよ。

ミチル:本当!? そう、そうだね、
    あの子小さいころから絵が好きだったからね。
    そう……そうなの、ああ、よかった……!
    あの子にもやっとやりたいことができたんだね!

イチカ:まだわかんないけど、そうだったらいいよね。


(間)


ユウゴ:――それから一か月近く、
    シンジは放課後になると美術室に通っていた。
    絵を描いてるのかと聞くと、
    シンジはうんと短く答えた。
    ちょうど俺も部活忙しくなってきて、
    しばらく放課後は別々に過ごしていた。

イチカ:――ユウゴはまったくいい奴で、
    部活もたまにさぼってはシンジに付き合い
    あれに興味はないかこれはどうだと
    引っ張りまわしてくれてたので
    そのユウゴが自分の部活に専念しだしたことも
    私は嬉しかった。
    もちろん、シンジのことも。
    だいぶ長い時間がかかったけど、
    死んだ小さな妹のことを忘れて、
    なにかに没頭できるようになったんだって。


(間)


ユウゴ:なぁなぁ!
    シンジ、美術コンクール入賞だってな!
    特別賞だっけ?

イチカ:そうらしいね。
    お祝いってほどじゃないけど、
    今日はシンジの好きなもの作るって
    お母さん張り切ってた。

ユウゴ:ふふっ。よかったよなあ、ほんと。
    ていうか、シンジ正直イチカの影で目立たないけどさ、
    本気出したら賞とれるくらい
    絵うめえんじゃんってこともわかったし、
    なんつーか、マジで、ほっとするわ。

イチカ:ユウゴは心配性だなあ。
    でも、まあ、シンジが絵描いたりできるようになったから、
    私も安心したとこはある。
    それで生徒会に出ること決めたし。

ユウゴ:お、シンジだ。シンジー! おめでとう! こいつう!

シンジ:……。ああ。ありがとう。

ユウゴ:なーんだよ!
    めでたいんだ、もっとテンション上げてけー?
    つってもそんな急には無理か! あはは!

イチカ:シンジ、それコンクールの冊子? 見せてよ。
    絵とか寸評とか載ってんでしょ。

シンジ:いいよ。

ユウゴ:お! どれどれ。
    ほー、すげえな。
    写真みたいなのもあれば、わかんねえのもある。

イチカ:シンジのは……ここだね

ユウゴ:んん? おー、すげえじゃん!
    迫力あるし、なんつーか、カラフルで色がきれいだ。
    でもなんつうのこれ、抽象画? なんだな。
    ぱっと見じゃ、なんの絵なのか俺にはわかんねえなあ。
    このへんのやつ、人か?
    5つそれっぽいのが並んでるな

イチカ:(寸評を読み)ふんふん……。……!?

ユウゴ:どうした?

イチカ:シンジ、これって

シンジ:ああ。……ミツキだよ。
    ミツキ、しゃぼん玉好きだから。
    しゃぼん玉で遊んでるミツキと、僕と、
    母さんと、イチ

イチカ:(さえぎり)シンジ! あんたっ!!
    いい加減にしてよ!
    ミツキは! いないの! 死んだの!!
    「好きだから」? 「好きだった」でしょ!
    あんたがそんなだから
    お父さんもお母さんもユウゴもみんな、

ユウゴ:やめろよ! イチカ、離せって! 落ち着けよ!

イチカ:うるさい!
    ユウゴがどれだけあんたのために尽くしてきてると思う!?
    せっかく好きな演劇部に入ったのにそれもさぼって、
    いつだってあんたがなにか興味もてることないかって

ユウゴ:いいんだって俺のことは!

イチカ:あんたが美術部に入ったときも、
    最近絵を描いてた間も、
    お母さんどれだけ喜んでくれたか
    あんた知らないでしょ!
    今日だってあんたの好きな唐揚げ作って
    帰りを待ってる!
    一番つらいのはお母さんなんだよ!?
    そのお母さんが気丈にふるまってるのに、
    あんたは……!

シンジ:……うるさいな。大きい声、出すなよ。
    ミツキがびっくりしちゃうだろ

イチカ:……!?

シンジ:ミツキは、いるよ。
    ずっとそばにいる。
    みんなには見えないだろうけど、
    もうけっこう大きくなったんだ。
    話すとわかるようになってきたんだよ。

イチカ:(震え)シン……ジ?
    
シンジ:イチカが怒鳴るから、ミツキおびえてる。
    大丈夫だよミツキ。
    お姉ちゃんちょっと驚いたんだ。なあ。

ユウゴ:シンジ……おま、え

イチカ:シンジ、あんた、もう、だめだ

シンジ:(微笑み)なに言ってるんだよ。
    さあ、ミツキ、帰ろう。
    今日はお母さんがごちそう作って待ってるって。
    楽しみだね。
    
イチカ:シンジ……あんた、病気だよ……。


(短く間)


シンジ:……♪しゃぼん玉とんだ やねまでとんだ
    やねまでとんで こわれてきえた
    かぜかぜふくな しゃぼん玉とばそ……。



                       fin_■


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